2024.10.10 更新
北陸ワイナリー巡りの旅(6)魚津の風土が育む極上ワイン KANATA ワイナリー~富山県魚津市~
“北陸のいいモノ・コトを発掘する”COREZOでは、北陸のワイナリーを紹介しています。
今回第6回目の訪問先は富山県魚津市にある新しいワイナリーKANATA WINERY(以下、カナタワイナリー)を訪れました。
この日、わたしたちを出迎えてくれたのは、ブドウの栽培から醸造の責任までを担う土井祐樹さん、スタッフの方、そして、ワイナリーの玄関に鎮座する巨大な魚津埋没林でした。
ツヤツヤなので、磨いた木のオブジェのように見えましたが、加工なしの天然の埋没林だったものと聞き、驚きました。
調べてみたところ、魚津埋没林は、約2,000年前に川の氾濫で杉の原生林が埋められてできたと考えられていて、1955年(昭和30年)に国の特別天然記念物の指定を受けていることがわかりました。入口に埋没林というインパクトのあるワイナリーは、2022年の春に設立されました。ワイナリー設立の経緯から話をスタートしましょう。
カナタワイナリーは、閉校になった短期大学の跡地を利用して、地元の企業が地域活性化のために立ち上げたワイナリーです。閉校となったこれらの施設がワイナリーという形で再利用されていることを知るのはうれしいことです。駐車スペースは広く、緑も多く、広々とした敷地で、周辺地も活用すればもっと活性化につながりそうな雰囲気の場所です。
ワイナリーのある西布施エリアは富山県で一番大きなブドウの産地として知られていますが、ここでも農家の高齢化と離農は避けられない問題で、ブドウ栽培をやめる農家が増えてきました。
そこで、生食用ブドウの産地に近い大学跡地を活用しワイナリーを設立して、地元のブドウ畑でブドウを育て、そのブドウでワインを造ろうという構想に結びつきました。
ワイナリーの設立は2022年ですが、ブドウの栽培は2018年にメルローの苗を植えたところから始まりました。自社畑で2022年に収穫されたブドウからワインを造っています。ワイナリーで試飲して印象に残っているのは、色鮮やかで、濃淡様々なロゼワインです。ワインを紹介しましょう。
UMI ROSE Cabernet franc(海のロゼ)
一番淡く美しいピンク色のロゼ(UMI ROSE Cabernet franc、海のロゼ)は、カベルネフラン100%のワインです。カベルネフランは黒ブドウなので赤ワインになることが多く、フランスのロワール地方などではカベルネフランから赤のスパークリングワインが造られることもありますので、淡いピンク色のワインをみると不思議な気持ちになります。かわいい色合いとは裏腹に、きりりと辛口のミディアムボディで、イチゴなどの赤い果実の香りが感じられます。
YAMA ROSE Merlot(山のロゼ)
海のロゼに対して、YAMA ROSE Merlot(山のロゼ)もあります。山のロゼはメルロー100%で、ジビエや山菜、薬膳料理にも合う、色調の少し濃いロゼワインです。軽やかなタンニンと果実味を楽しみながらも、飲みごたえも感じられる辛口なロゼワインに仕上がっています。
D.O.A(D.O.シリーズの赤ワイン)
ほんの少し淡めのルビー色をした赤ワインとして、D.Oシリーズの赤ワインのD.O.Aがあります。Aはアッサンブラージュ(ブレンドを意味するフランス語)のAで、このワイン(D.O.A)はカベルネフラン(海のロゼのブドウ)とメルロー(山のロゼのブドウ)が混ざっていて、海と山のロゼの“良いとこどり”ができているようなワインに仕上がっていて、まとまりもよいです。
これらのワインは自社畑で栽培したブドウから造られた2023年のビンテージ(ブドウの収穫年のこと)です。
カナタワイナリーのブドウ畑は3ヘクタールあり、欧州系の品種が植えられています。ソーヴィニヨン・ブランやアルバリーニョといった白ブドウも植えられています。黒ブドウの品種としては、上で紹介したカベルネフランやメルローの他に、ピノノワールも植えられています。一般的に欧州系の品種は雨に弱いのですが、魚津の年間の雨量は2,500㎜と非常に多いのが特徴です。冬の雪も含まれますので割り引いて考えるべきですが、それでもブドウ栽培の条件としてはよくありませんので、苦労はあるようです。
農業関係の技術者として県庁で働いていた土井さんは、果樹の専門家です。土井さんが言うには、果樹はリンゴも含め全般的に雨に弱いそうです。リンゴとブドウでは果皮が全く違いますが、リンゴでもそうなのかぁと感慨深く、記憶に残る一言でした。
いろいろな病気(ベト病、ウドンコ病、晩腐病、灰色カビ病などが代表的です)を防ぐため、欧州系の品種を栽培していても、欧州で見られるような垣根栽培にはせず、棚栽培で育て、雨を防ぐビニールをかけているとのことでした。多湿と雨を避ける工夫なのだろうと思いました。ブドウにとって良い条件もあり、それは、夜の気温が下がりやすいこと、赤土の割に水はけのよい土壌ということでした。
ロゼスパークリングワイン
カナタワイナリーのブドウ畑で収穫されたブドウから造られるワインには、2022年ビンテージのスパークリングワインもあります。このスパークリングワインは、地元で長年栽培されてきた伝統的な黒ブドウ品種であるバッファロー(別名アーリースチューベン)から造られています。瓶内二次発酵を経ているため、繊細な泡立ちが楽しめ、見た目も鮮やかな美しい深みのある辛口のロゼとなっています。自信を持っておすすめできる一本です。
東京方面からのアクセスは、北陸新幹線「はくたか」で黒部宇奈月温泉駅まで行き、そこからタクシーで15分ほどの距離です。あるいは、黒部宇奈月温泉駅から富山地方鉄道というローカル線に乗り換えて、新魚津駅で下車するのもいいでしょう。新魚津駅は富山湾に近いところに駅があり、天気が良ければ蜃気楼が見える風光明媚な街です。この駅からだとタクシーで10分少々です。
北陸新幹線が福井まで伸びたことで、富山、石川、福井と移動して旅を楽しむこともできるようになりました。次のお休みに富山を楽しむ、というのもありでしょう。富山県魚津市にできたワイナリーのご紹介でした。
※掲載されている情報は、時間の経過により実際と異なる場合があります。
記事作成者:COREZO