2024.5.31 更新
北陸ワイナリー巡りの旅(4)福井県の老舗ワイナリー「白山やまぶどうワイン」福井県大野市~
“北陸のいいモノ・コトを発掘する”COREZOでは、北陸のワイナリーを紹介しています。
第4回目の訪問先は、福井県にある白山(はくさん)やまぶどうワイン、通称「白山ワイナリー」です。
白山ワイナリーは福井県に誕生したワイナリー第一号で、石川県・福井県・富山県・岐阜県の4県にまたがる「白山ユネスコパーク」エリア内にあります。
ワイナリーがある大野市の南六呂師(みなみろくろし)エリアは星空の世界遺産と呼ばれる「星空保護区®」に認定されるほど星空が美しいところです。
ワイナリーへのドライブ途中、巨岩がいくつも点在していることに目を奪われます。古そうな巨岩が随所にあるのですが、不思議な大きな塊は、地殻変動によって山体崩壊(火山の噴火により山自体が崩れ落ちることを言います)した破片が巨大な岩となって流れてきたものと考えられています。
本当に大きな岩なので、火山が噴火するという自然災害の影響に圧倒されますが、地元では伏石(ふくいし)と呼ばれ、親しまれています。
話をワイナリーに戻しましょう。
白山ワイナリーはこうした伏石が点在するエリアにあり、ワイナリーの目の前には歴史あるお地蔵さんも鎮座しています。
このお地蔵さんに見守られ、約四半世紀続いている白山ワイナリーです。
白山ワイナリーは歴史を感じる自然豊かな場所にあり、のびのびと楽しい発想でワインを造っています。
エコな精神も宿っていて、とても楽しいワインの数々です。
主要なブドウ品種は「山ブドウ」で、「自生の山ブドウ」、「ヤマソーヴィニヨン」、「小公子」が三大品種になります。
「自生の山ブドウ」とは、その名の通り昔から山にあった品種で、登山者や地元の人たちはその果実を絞って飲んでいたそうです。
粒は小さく、皮は厚く可食部が少ないため、搾汁率は低く果汁は希少ですので、秋の宝石とも呼ばれるそうです。
素敵なネーミングです。
可憐な粒に対して、山ブドウの葉っぱは大きくて分厚く、ゴツゴツしたイメージです。
欧州系のブドウ品種の葉っぱを見慣れている人からすると、とても存在感があります。
枝も方々に伸びていて、樹勢も強そうだとわかります。
自生の山ブドウは高温多湿な日本の気候の中で丈夫に育ってきた品種ですので、この血を受け継ぐ交配品種は複数あります。
山ブドウの交配品種は耐病性に優れていて、比較的栽培もしやすいようです。
主要なブドウ品種の残る2つは、山ブドウとの交配品種になります。
山ブドウと、代表的な赤ワイン品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンから、「ヤマソーヴィニヨン」という交配品種が造られ、1990年に品種登録されています。
山ブドウ独特の野性的な風味と豊かな酸、カベルネ・ソーヴィニヨンの持つ芳醇な香りがあるのがこの品種です。「小公子」というかわいらしい名前も交配品種です。名前に“小”とあるように、とても小さい粒が特徴です。
この品種は、日本葡萄愛好会の澤登晴雄氏が開発した品種とされています。
濃い赤紫色で甘みと酸味のバランスがよく、小公子の名前がぴったり合うそうです。
さて、白山ワイナリーには他にも山ブドウの改良種があります。
「ヤマ・ブラン」という白ブドウです。
これは、山梨大学で生まれた品種で、山ブドウとヨーロッパ品種のピノ・ノワールとの交配品種です。
次の写真にあるように、黄色から青色がかった小粒のブドウで、酸味のしっかりとした白ワイン用のぶどう品種です。
黄緑色の果皮の白ブドウなのですが、両親はともに黒ブドウですので、交配品種が白というのは面白いです。
このブドウ品種がピノ・ノワールのDNAを受け継いでいるというのも不思議に思えます。
日本にワイナリーは多くありますが、主な品種が山ブドウというワイナリーは多くありません。山ブドウで造った珍しいワインを飲むことができるだけでなく、ここはとても楽しいワイナリーです。
上述のように、山ブドウは小粒で搾汁率が低いので、果汁量は多くありません。
そこで、山ブドウ系の品種だけで造るワインの他にも、日本を代表する赤ワイン用品種である「マスカット・ベーリーA」を半分混ぜて造っているワインもあります。
例えば、山ブドウにマスカット・ベーリーAを混ぜたワインは“山麓(さんろく)”、ヤマソーヴィニヨンにマスカット・ベーリーAを混ぜたワインは“茜空(あかねぞら)”、小公子にマスカット・ベーリーAを混ぜたワインは“霧晴(きりばれ)”という名前で販売されています。 なんだかパズルのようで、面白いなぁと感じます。
他にも1つのワインから3つのスタイルでワインが造られています。
上で紹介したヤマ・ブランに日本を代表する白ワイン用品種である「甲州」をブレンドしたワインがあります。
このワインを辛口に仕上げたものは「D-style」、辛口と甘口の中間の後味にほのかに甘みを感じる中口(ちゅうくち)に仕上げたものは「Dan-danブラン」、樽に入れたものには「ブラン・プルミエ」という名前がそれぞれついています。
白山ワイナリーの面白い試みは畑のサポーター制度です。
畑のサポーターとして登録した人が畑に来て作業をするというもので、交通費の支給もなく、ボランティアの仕事なのですが、全国から何十名もの人が登録しているそうです。
業務日誌のような冊子に、いつきて、何時作業したかを書き記しておくと、働いた年の翌年に、小公子でできたワインをもらえるそうです。
白山ワイナリーにアクセスできるワイン好きな人は登録してはどうでしょうか。
もうひとつの面白い試みは、地元の福井県とのタイアップで、ワインカレッジを運営していることです。
ワインカレッジとは福井県の農林水産部中山間農業・畜産課が主導して、2年間でワイン造りを学ぶコースです。
いろいろな場所からワイン造りを学びに来ている人がいるそうです。
私たちが訪問した日は、ちょうど県外のブドウが運び込まれ、除梗、圧搾されているところで、ワインカレッジの人が実習として手伝っていました。
座学だけでなく実習もある2年間のワインコース、興味ある方は福井県庁に問い合わせてみてください。
さて、白山ワイナリーの魅力についてお話してきました。
福井県外ではなかなか入手できないワインですので、越前地方に行く機会があれば、大野市まで足を運んでワイナリー訪問はいかがでしょうか。
とてもおいしい山ブドウのソフトクリームもありますし、夏前にはブルーベリー摘み、夏終盤にはブドウ狩りも楽しめます。
最寄りの鉄道駅はJR越前大野駅で、白山ワイナリーはここからタクシーで約15分のところにあります。
平日は1時間前までに予約すれば「乗合タクシー」が利用できて、駅から500円ほどで着くそうです。
北陸方面から車で行く場合は、中部縦貫道路という新しい道路を通り、荒島ICを降りるとすぐです。
名古屋方面からや大阪など関西方面からのアクセスも悪くありません。
ワイナリーの近くにも楽しめる場所はいろいろあります。
大野市にある標高249mの亀山に築かれた大野城は、雲海に浮かび上がる天空の城として有名です。
県内には永平寺や東尋坊といった名所もありますし、県立恐竜博物館や芝政ワールドといった子供が楽しめる場所もあります。
大野市は蕎麦栽培がさかんな地域で、蕎麦も有名です。福井県に足を運び、大野市でお城を見て、蕎麦を食べて、ワイナリーに足を運ぶ、という休日はいかがでしょうか。
福井県大野市にある白山ワイナリーの紹介でした。
基本情報
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営業時間
9:00~16:30
-
定休日
年内無休 ※年末年始と1月~3月の間は日曜祝日休業
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お問い合わせ先
白山ワイナリー
0779-67-7111
[email protected]
-
公式サイト ※外部サイトに遷移します
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住所
https://www.yamabudou.co.jp/
※掲載されている情報は、時間の経過により実際と異なる場合があります。
記事作成者:COREZO
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